■ 第二話 寂しがりやのMIURA
真奈美と出合ったのは 深夜の第三京浜だった。
涼子が亡くなった後 俺は暫らく抜け殻のようになっていた。
勤めていた会社も止め 毎日朝から飲めない酒を胃に流し込んで 気を紛らわす日々だった。
一月もした頃 保険会社から連絡があった。
俺には知らせず 涼子は自分自身に保険を掛けていたのだ。
その金額は 1億円。契約時に受取人に宛てたメッセージが残っていた。
親愛なる貴方へ。私は勿論 貴方と共に年をとり自然に死が訪れるまで 貴方と一緒に居たいけれど人生なんて
いつ何が起こるかは 解らない。
ですから 本当に万が壱のために この保険を掛けておきます。ただ 貴方には内緒。
だから このメッセージを貴方が見るときは 私がこの世にいない時。
もしそんな風になった時でも 貴方には元気で生きていって欲しい。
そんな願いを込めて。
涼子。
何度も読み返すうち 涙で字が見えなくなったが俺は充分すぎるほど悟った。
死ぬまで 涼子には頭が上がらないんだと。
四拾九日の法要が終わった後 俺は動き出した。
彼女の残してくれた 大切なお金を無駄にするわけにはいかない。
元いた会社のつてで 投資ファンドのグループにも接触した。
ラーメン屋のチェーン店という話もあった。
でもピンと来る物がない。
そうこうして 半年も経った頃
いつものように 俺の涼子 "ディノ ” をキャステルの鞍さんのところに 預けにいった。
点検とオイル交換をしてもらうためだ。
鞍さんは オイルはそんなに急には劣化するものではないから3,000Km に一度変えれば充分だよと言ったが
俺には涼子の’血’が汚れるのが嫌なのだ。
いつもの行きつけの 山手の洒落たクラブで ハーブティーを飲んで話をしていると月形さん(俺の名前だ 月形 銀二
子供の頃から自分の名前が嫌でしょうがなかった
まるで 時代劇に出てくるような名前 おまけに西洋人に解りずらく ツキカタ ?と 何度も聞き返えさせる )
これからの仕事はどうするの?
鞍さんは 時には俺の兄貴分になって 心配してくれる。
いや、まだこれという仕事が見つからないんだよね。
それなら こんなのどう ?
今 俺のところに やってくれという仕事があるんだけど
ご存知のように 本業が忙しくて 副業にまで手が回らないんだよ。
と言って 説明を始めた。
それは 車好きの俺にとって 興味を惹かれる内容だった。
日本在住の外国人 ないし 帰国子女に 日本での運転を教えるプライベート ドライビング スクール。
まあ 始めは儲からないと思うけど いろんなコネが出来て面白いんじゃない ?
月形さんは英語は出来るよね ?
確かに鞍さんの言うとうりだった。
今の俺の身の回りの友人 勿論インターナショナルだ。
アメリカの大富豪
アラブのプリンス
イタリヤの貴族
みんなこの仕事を通じて知り合った。
普通の仕事をしていては 一生会えなかった人達ばかりだ。
始めは英語での会話に苦労したが 直ぐに慣れた。
ある日 横浜での仕事を終えて 第三京浜を 東京方面に流していた。
ここは 都心に通じる有料道路としては 歴史が古く
開業当初から 片側3車線 先見の妙があった。
制限速度は 80Km だが
夜中になると 交通量が殆ど無くなり 1Km 先まで車が見えないなんてことも良くある。
おまけにカーブが緩やかで 殆ど直線みたいなものだから
空いてさえいれば 簡単に200Km は出せる。その日は 仕事の車で ベンツのロリンザーS500だった。
好きなイギリスのポップシンガー Sade (シャディー) のCDを聞きながら流していると都築のインターを過ぎた辺りに
何か低くて まるでルーフを押しつぶしたような 車が止まっている。
ハザードを出しながら 暗闇にうずくまる そいつは 黒か紺色のように見えた。
俺は素早く 追い越し車線から真ん中のレーンに移り アクセルを緩めた。
何故なら その低い車 通り過ぎた時に解った ランボルギーニ Miura
だ
その脇に 一人の女がぽつんと 立っていたからだ。
一瞬迷ったが 俺は路側帯にフルブレーキングで止まり ハザードを出した。
ベンツは流行の ホワイトだから 夜でも目立つ。
少し小走りで ミウラのもとに駆けよると
その女が ちらっとこちらを見た。
スタイルが良さそうで 長い髪だ。でも あまり嬉しそうな表情では無い。どうしたんですか?
俺の問いに 彼女は不機嫌そうに見れば解るでしょ こいつが止まっちゃったのよ。と黒いミウラの低いルーフをポンポンと叩く。
まるで 粗相をした犬を叱るように。
JAFかなんかに連絡したんですか?さっき来たわ でも車が低すぎて引っ張れないんだって。
しょうがないから こいつの持ち主に連絡して来るのを待っているのよ
どれくらい前 ?もう1時間よ 本当に頭に来ちゃう
私はこんな車に 乗りたくないのに
お前が1番似合う車だと言って
むりやり 乗せるんだもの。
俺は鞍さんの言ってたことを思い出していた。
ミウラは 60年代に作られた 最高のスポーツカーだ。
シャシー、エンジン、ボディ それぞれに作ったパーソナリティーが判りテストドライバーはボブウオレスだ。
みんなで協力して 世界最高のスポーツカーを作るそんな技術者の気概が感じられるから、俺はこの車が好きなんだ。
事実 キャステルでは 常に年間3台くらいの ミウラを手がけているしその数は年々増える傾向にあるという。
但し、鞍さんはこうも言っていた。
この車は自動車としては とても未完成な車だ。
当時のランボルギーニの技術では
シャシー エンジン ボディをまとめてパッケージングするのが精一杯で普通なら 細部を煮詰めて 完成度を高めるのが
市場の要求で 早くリクエストしたオーナーに手わたさざるを得なかったのだ とも。
まして作られて 40年余り時間が経てば その相乗効果で壊れて当たり前。
キャステルのポリシーは それをいかに 普通に乗れる状態にするのかがポイントなんだと。
また、塗装や 内装は それほど車を知らなくても 原型が残っていれば 修復は出来る。
でも走ることに関しては 本当のエキスパートしか解らない 世界なんだと。
彼女は 長い黒髪を 風にゆらして タバコをくゆらせている。
時々 吸うときの赤い炎が 線香花火のように横顔を照らしていた
よく見ると ミウラの色に合わせたのか 黒のレザーパンツに 黒のフォックスファーを羽織っている。
普通フォックスは グレーかブラウンだから 黒は珍しい。
スタイルは抜群によさそうだ。
俺は女を見るとき まず後姿を見る。いわゆる背姿というやつだ。
前はいくら 化粧でごまかせても 後ろはその人の人格が出る 男も女もだ。
昔 俺の母親 京都で日舞の師範をしていた が、
習いに来る舞妓などに 背姿が大事やで と 何度も言うのを聞いていた。
貴方 何故 わざわざフルブレーキィングして ここに止まったの ?
彼女は正確に見ていた
用事が無いなら さっさと行きなさいよ!
そう言った 真奈美の横顔は瞳が大きく 顔が小ぶりで まるで シャムネコのようだ。
おまけに プライドが高いのも似ているらしい。
よけいに この女に興味を持った俺は
わざと乱暴に
こんな動かない車 置いていけよ
誰かが 拾ってくれるよ
それより 東京に戻って 麻布辺りで 飲まないか ?
いいわよ
あっさりと 彼女はそう言って
始めて俺を 正面から見て 微笑んだ。
第三京浜を出て 目黒通りに入り
麻布へ向かう途中
涼子が亡くなった 等々力の交差点に差し掛かる
俺はちょっと 後ろめたい気分になった。
まだ 見ず知らずとは言え 横に女を乗せている
涼子もすこぶるつきの美人だったが
横にいる 真奈美も日本人離れした エキゾチックな雰囲気の美人だ。
もしかしたら クオーターくらい 舶来の血が混ざっているのかも知れない。
麻布の行きつけのバーに 到着するまで
真奈美は ずっと黙ったままだった。
俺も自分から 喋るのを控えている
言葉と言うのは 不思議な生き物だ
口から一旦出てしまうと 吐き出した人物の人格を離れ 一人歩きする。
俺は 無駄口は一切 叩かない主義だ
ベンツの中は温度調節が効き 快適な空間だ テンプセットを21度にし 外気取り入れにしてある
Sade の声がセクシーに 空間をさまよっている。
いつのまにか 彼女の刺々しい雰囲気は無くなり
黙っていても 気持ちが和んでいくのが やわらかい空気と共に伝わってきた
車と言う 外気と遮断された空間では お互いの匂いまで感じ取れる
だから お互いの波長が合うかどうかで 中の空気の重さが全然違ってくるのだ。
目黒駅を過ぎて 広尾に曲がる頃には
俺たちは お互いのパルスが合うのを 感じあっていた。
彼女は レッドワイン しかも フルボディのボトルを 注文した
アルコールはそれしか飲まないという
少しして ぽつり ぽつりと言葉を 唇から落とし始めた
ウインストン ライトには 火を点けたままだ
カウンターの前には いろんな色のボトルが並び
お互いが自己主張している
私は結婚しているの
でもかごの鳥みたいな 今の生活が大嫌いなのよ
突然 怒ったようにそう言うと ワイングラスをぐっと飲み干し
バーテンダーに
お代わり頂戴
フルグラスに入れてね
どうやら 相当 ワインが好きらしい
アルコールが進むにつれ 彼女は饒舌になった
旦那は株の投資会社をやっていて
殆ど家にいない事
広尾のガーデンハイツに住んでいる事
旦那も無類の車好きという事
驚いたことに 名前を聞いたとき
俺もよく耳にする 株の世界では有名な人物だった
数々の仕手戦を物にし 多数の信者と スポンサーを持っている
また 車と女が大好きで
マクラーレン F1を 持っていると言う 噂を聞いたことがある
彼女に確かめると あっさりと そうよ と言った
でも私はあの車は大嫌い
あの人 センターシートに座って 両側にそれぞれ女を乗せて 走るのが趣味なのよ
それも 銀座の女を乗せて
くやしいったら ありゃしない
マクラーレンで銀座の店まで乗りつけて
3人で同伴だ なんて 言ってるらしいわ
私も 元銀座にいたから 耳に入ってくるのよ
確かにありきたりの フェラーリならともかく
マクラーレン3人乗りで 店に乗り付ければ 有名になるだろう
おまけに ボディカラーは ホワイトだと言う
まさに銀座のトワイライトタイムに ぴったりの シチュエーションだ
ロンデニスも まさかこの車にそういう用途があったとは 思っていなかったに違いない
ミウラは嫌いじゃないのよ
真奈美はそう言った
スタイルは 凄くセクシー
特に真横からのデザインは 惚れ惚れしちゃう
でも1年前から 乗り始めたんだけど
しょっちゅう 壊れてばかり
誰か 貰ってくれる人いないかしら ?
今 そのミウラは 俺の手元にある
後日 彼女の旦那に聞いてもらうと 売ってもよいとの返事だった
この車は ミウラ ’S’ だが ’SV’を手に入れるらしかった
手に入れて 早速 キャステルの工場に持ち込んだ
鞍さんに見てもらうと
ディノの次はミウラか だんだん深みにはまるね
と 笑われたが 真剣に車を見ると
乗りっぱなしだから駄目なんだよ ミウラは常に手を入れてやらなくちゃ
と言って 大体の修理箇所を説明してくれた
1) エアークリーナーを外して ファンネルにする 火災防止と プラグの交換を容易にするため
2)電気周りの総点検
ダイナモを I C レギュレーター付きに変更(充電電圧が安定する)
セルモーターも オーバーホール ラジエターファンも同様
コイルからトランジスタ点火に変更 (フルトラにも出来る)
プラグコードの引き直し
アーシング ダイナモ セル の両方
3)ヘッドライトの昇降モーターのオーバーホール ついでにそれのギヤーも
4)キャブレターの完全オーバーホール
5)デスビキャップの交換
6)フロントアライメントの調整 トーインをマイナス1度にセット(直進が良くなる)
7)ショック ブッシュの交換
8)クラッチマスターシリンダーの オイルシールの交換 (よくいかれる)
9)おまけに フロント リヤーのホイールを新品の 7.5J 9Jの
同型 アルミに交換 するとアンダーが出て乗りやすくなる
勿論俺は 全て任せて お願いした
こういう車は プロの言うことを聞いたほうが絶対に良い
今 このミウラは 買ったときと大違いだ
常に セル一発で始動し
アイドリングも安定している 加速も滑らかだ
なんと言っても V12の 乾いた音が良い
5000回転を越える辺りから 7500くらいまで しびれるような 快音で回っていく
フェラーリの355や モデナと違い キャブの吸気音 エンジンのメカニカルな音 (チェーン駆動だからか)
全てがアナログで 乗り手の5感に訴える
ディノは その迫力を2分の1にした感じだが それはそれで良い
真奈美とは その後 よくドライブに行く仲になった
勿論 涼子のディノではなく 元真奈美のミウラでだ
彼女も前より 全然良くなったと喜んでくれた
いつものルートは 渋谷から首都高に入り 東名に直進 厚木で降りて
小田原 厚木道路を抜け 箱根ターンパイクに登るというコースだ
真奈美にドライブさせると 綺麗にダブルクラッチを使い
回転を適度に上げて 上手に走らせる
PAで止めると サングラスをかけた真奈美に みんな驚くようだった
暫らく 後 彼女は離婚した
旦那に新しい彼女が出来たらしかった
当然 慰謝料は相当貰ったようだ
いろいろな相談に乗るうち 彼女は一人でいるのは寂しいと しきりに言うようになった
おれはその頃 女友達の2〜3人はいたが
みんな真剣に付き合いするほどの魅力は 無かった
だから 俺は真奈美に
一緒に住んでみようか と言った
親しくなるにつれ
俺の中には 真奈美に惹かれる気持ちが 日増しに強くなっていた
シャープな顔立ちと 意思が強そうな瞳
柔らかいが しなやかに顔にまとわりつくような ゆれる黒髪
165センチはあるだろう身長の 半分くらいはありそうな 長く細い足
華奢だが 体のどの部分を触っても ウレタンのように柔らかく反発してくる
それにもまして 俺を魅了したのが
アルコール というスイッチが入ると
子猫のように可愛らしくなる言葉使いと 甘える仕草だった
SEXの最中は 大きく喘ぐと 俺にしがみついて来る まるでこの世の別れのように
とても素敵よ 大好き
そして 子供のように 眠るのだった
俺の胸元に頬を押し当てて、、、、
ところが 同じ部屋で 毎日寝起きしてみると
彼女の別の側面が見えてきた
つまり アルコールと 薬物の依存症
朝から ワインを飲みだす
食事も本当に おなかが空かないと食べない
おまけに 夜は眠れないからと 睡眠薬
SEXの時も より感じるからと 合法ドラッグを呑む
俺は生まれて始めて SEXショップに付き合わされた そのドラッグを買うためだ
真奈美は 全然臆することなく 店員と自分の好みを相談している
それでも 精神が安定していれば良いのだが
2〜3週間 良い状態が続くと 急に落ち込んで 酒がひどくなる
その後は 決まって泣き出すのだった
私なんか 死んじゃえばいいのよ
どうせ 世の中にいたって なんの役にも ならないんだから
俺が いくら 真奈美がいるから毎日が楽しいんだ と諭しても 無駄だった
鬱の状態になると 完全に自分の世界に入り込んで
他人の言葉には 耳を傾けなくなってしまう
俺は 出来るだけ 彼女の生活が安定するよう 努力した
朝は 8時には起こし 規則正しい食事をするように
でも本人の自覚なしでは 無理だった
ある日 真奈美は突然部屋を出て行った
2日経っても 戻ってこない
心配して 唯一の姉妹の 妹にも連絡したが 行方は判らなかった
彼女たちの両親は 幼い時に離婚し
母親も数年前に 癌で亡くなっている
真奈美が口癖のように
私には帰るところが無いの
と酔いつぶれると 泣きながら言っていたが 事実 妹とは仲が悪いようだった
1ヶ月もした頃 小田原の警察から電話があった
実は投身自殺をした 女性の所持品の中に 貴方の名刺があったので
身元確認のため 署までお越しいただきたい
俺は一瞬頭が 真っ白になった
しかし 来るものが来たような気がして
意外と冷静に
直ぐに伺います と答えていた
警察署の裏手の小さな部屋に 真奈美は眠っていた
顔を確認くださいと 係りの人が白い布を取ると
見慣れた 真奈美の寝顔が そこにあった
少しだが 微笑んでいるように見える
箱根ターンパイクの 中ほどにある 大きな橋から飛び降りたと言う
直ぐに俺には 理解できた
其処は 俺と真奈美でよくドライブに行き 少し先の パーキングに車を止めると
其の 赤い橋 と呼ばれる ところへ歩いていき
眼下の 小田原から 湘南に伸びる 遠い海岸線を見るのが 彼女の好みだったからだ
私 ここからなら 飛び降りて 死んでもいい
だって こんなに綺麗な景色を見ながら 空を飛べるのなら きっと楽しいもの
俺は 一瞬ドキッとしたが いかにも真奈美らしい発想だと 其の時は思っていた
それを 現実にするなんて、、、、、
でも俺には 彼女の意識の中では 恐怖よりも 楽しく空を飛ぶ気持ちのほうが
勝っていたように 思う
彼女の遺体の脇には 半分ほど空けられた ワインのボトルが落ちていたそうだ
雪解けの 柔らかい地面だったので 割れずにいたのだろう
これが唯一の遺品です
係りの人が 差し出した 見覚えの有る財布を受け取る
俺と彼女と ミウラが映っている写真が入っていた
俺は 写真の中の 輝くような 笑顔を見ると
突然 こらえきれない 怒りと悲しみが胸を襲い
辺りをはばかることなく もう生きてはいない真奈美に抱きついて号泣した
ごく内輪の小さな 葬儀だった
お骨は母親の眠る 札幌のお墓に一緒に入れてやった
雪の積もる 小さな墓だった
少し 墓石にワインをかけてやると 白い雪と混ざって 淡いピンクになった
一人マンションに帰ると テーブルの上に 真奈美の飲み残したワインボトルがある
警察に頼んで貰ってきたのだ
念のため 薬物検査をすると言って 戻ってきたのは2週間後だった
真奈美の愛用した ワイングラスに注ぐと 葡萄の濃い赤の色をしている
俺には なんとなく白よりも赤を好む 彼女の気持ちが判るような気がした
赤のほうが より生命力が強く感じられる
彼女も それを持っていれば、、、、
そして俺には 黒いミウラが残った
彼女のことを思い出さずにいられないから と鞍さんに相談したが
手放すのは止めとけ と言われた
このミウラを手放したら きっと彼女は寂しがる とも言われた
俺は 涼子のディノ 真奈美のミウラ
二人の女 2台の車
それぞれの業を背負って 生きていく決心をした
その後 涼子のディノと 真奈美のミウラは 別々の場所に置いてある
勿論 彼女たちが 喧嘩しないためだ
賢明な涼子なら きっと許してくれると思うが 女の嫉妬は恐い
暗いガレージに佇む ミウラを見るたび
彼女を救ってやれなかった 自分に寂しいものを感じる
でも最近は このミウラが 真奈美自身なんだと思えるようになってきた
わがままだけれど 飛び切り Cool だった彼女
でも彼女はとても 寂しがりやだった
そう 寂しがりやのミウラのように、、、、、
第二話 終わり
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